今はもう思い出せない
あの人の声
あの人の仕草
あの人の癖
古い記憶は段々と
新しい記憶に
塗り替えられていく
忘れたくないのに
時の流れは残酷で
今もこうして流れている
時の流れに流されながら
もう流れに流されない
あの人のことを思う
今この瞬間の思い出も
重なっていったのならば
いつしか消えてしまうのでは
ないのだろうか



あの頃時が止まってくれれば
あの人と楽しい日々を
今も尚過ごせていたのに



時の流れは止まらない
そして同じときは二度と来ない
水の流れのように
炎の揺らめきのように
一度過ぎてしまった時はもう
記憶の中にしか
存在しない



時の流れは残酷だと
一体何度思っただろうか
覚えておきたい記憶でも
薄れてしまう
あの人と過ごした楽しい時間
あの人の笑った顔を



あんなに印象強い
あなたとの思い出
忘れることはないと
思っていたのに
今ではもうおぼろげにしか
思い出せない



忘れてしまった思い出は
もう存在しなくなってしまうのだろうか
なかった事となってしまうのだろうか
事実を言うことは簡単でも
その事実を鮮明に
思い出すことは難しい



いつの日か私が居なくなり
その時悲しんでくれた人も
時が流れれば私のことを
思い出せなくなってしまうだろうか
忘れてしまうだろうか
その時私という存在は
どうなってしまうのだろうか



過去の時は流れない
色あせて消えていく



今と言う時は流れる
止まりはしない
永遠に



未来を人は想像する
未だ来ることのない時を
ただ人は思い焦がれるだけ



交わることのない
3つの時
過去は常に現在の後にあり
未来は常に現在の前にある
私たちは現在を生きる
交わることのない
時を思いながら








                          色 褪せた写真