「あ、師匠〜!!」
聞き覚えのある声に、彼は立ち止まった。
そうしてゆっくりと、声のした方に視線を移す。
視界に入ったのは、パタパタとこちらに近付いてくる、大きなリボンをした少女が1人。
その少女の向こうに3人の、全部で4人。
いずれも、彼にとっては見慣れた顔であった。
「………。」
「どうしたですか、師匠?ボケ〜っと突っ立って…ま、まさか!!記憶葬式にでもなって姫ちゃんたちのこと忘れちゃったのでは!?」
「僕がボケっとしてるのはいつものことだよ、姫ちゃん。あと記憶『葬式』じゃなくて記憶『喪失』。」
大袈裟なぐらいに慌てだした少女に冷静に突っ込むと、彼は他の3人の方へと近付いて行く。
少女もその後ろをついて行った。
「どうも、みいこさんに崩子ちゃんに萌太君。」
「うむ。」
「こんにちは、戯言遣いのお兄ちゃん。」
「どうも。いー兄は、大学の帰りですか?」
彼が名を呼んだ順に、反応が返ってきた。
ポニーテールの女性は頷き、おかっぱの少女は挨拶をし、少年は笑顔で訊ねたのだ。
「まぁ、そんなところだよ。ところで…」
彼は胡乱気に4人を見た。
「こんなところで何を?」
「焚き火ですけど。いー兄も一緒にどうです?暖かいですよ。」
「や、そういう意味じゃなくて…」
笑顔で言う少年に、ため息混じりで彼は答える。
彼がそう訊ねるのも当然だろう。
4人は、鴨川で、焚き火をしていたのだ。
…いや、焚き火といっていいのかは微妙なところだが。
燃やしているものは、落ち葉ではなく、新聞紙なのだから。
「何で新聞紙?」
「焚き火が出来るほど、落ち葉があるように見えますか?」
おかっぱの少女がクールに答える。
「…わざわざ鴨川で?」
「わざわざ来たわけじゃありませんよ。みんな、ここで偶然出会ったんですから。」
「それに、アパートの近くでやったら危ないですよ〜。『かのこ』だけで燃えちゃいそうです。」
「かのこって誰だよ。」
火の粉と言いたかったらしい。
「っと。そろそろいいんじゃないですか、みい姉?」
火の様子を見ていた少年が、ポニーテールの女性へ顔を向けた。
「そうだな。」
その言葉に頷くと、女性は木の棒で新聞紙の中を探りだした。
「若い順にいくか。崩、お前からだ。」
「ありがとうございます、みい姉さん。」
「萌。」
「お先にいただきます。」
「姫。」
「わーい!どうもです、みい姉さん♪」
「………。」
彼は無言でその光景を見ていた。
「どうした、いの字。お前の分だぞ。」
「あの、みいこさん?」
「何だ?」
「何ですか、これは…。」
「いー兄、見てわからないんですか?焼き芋ですよ。」
少年が、呆れたような視線を向けた。
「そういう意味じゃなくて…。あつっ!」
よく焼けた芋を受け取りながら、彼は視線を落とした。
「何でこんなにサツマイモが?」
「鈴無に貰ったんだ。」
自分も焼き芋を手に持ちながら、彼女は説明する。
「大量にあるから持って行けと言って聞かなくてな。私はこんなにいらないと言ったのに。」
最後は溜息混じりだった。
「………。」
何か言いたげな視線を4人に向けるが、結局彼は何も言わなかった。
かわりに、焼き芋を頬張る。
「…うん、美味い。」
「ですねー。みい姉さん焼くの上手です!」
「これぐらいならな。」
「崩子、火傷しないようにね。」
「私はそんなに間抜けじゃありません。」
空がほんのり赤くなり始める、夕方より少し早い時間。
(平和だなぁ…。)
彼は、一緒にいる焚き火を囲っている4人を順に見ながら、そんな風に感じていた。
…火宮紀衣栖様に頂きました!見て下さいみなさん萌太くんですよしかも限りなく原作に近い!(落ち着け)
管理人は素直に偽物萌太くんしか書けないのでこんな風に原作調萌太くんに出合うと動悸息切れその他各種の症状が表れるのです(にっこり)ああ素敵だなぁこんなアパートあったら丸一日ストーカーですね!ラブリー!
管理人の萌太狂いに手を差し伸べるようにそっと書いて下さいました…本当にありがとうございます幸せです…!てか真面目なお話この小説頂いた日一日ハッピーでしたよ管理人…!
ありがとうございました!そのうちお礼いたしますね…!