嫌がる総司を言いくるめて体から引っぺがし、布団を敷いて寝かしつけ、夜更けに自室に入ってから仮眠をとった。
そんな早朝。
「斎藤くん、昨日はよくもやってくれたよね」
いきなり部屋に闖入者がやってきた。言わずもがな、沖田総司である。
総司は入るなり俺の布団を引っぺがし、浅い眠りに入っていた俺を見下ろしてにやにやと笑った。
「…なん、……?」
寝起きで頭が回らない。首の後ろあたりがぐらぐらするように思うのは、酒のせいかもしれない――などと考えていたら、いきなり頬をつねられた。悲鳴をあげるなど無様なことにはならなかったが、思わず顰めた眉だとか慌てた様子だとかは、大いにこの男の気に入ったらしい。総司は、機嫌良く笑った。そしてそのまま、一気にまくしたてる。
「命令。君の想い人を僕に教えるっていう取り決めしてたけど、あれ、無くしてくれるかな」
「…、………?」
頭が回らない。
「だから、この遊びの勝者としての権限を、それに使わせてって言ってるんだよ。僕さあ、これ、もうちょっと続けたくなっちゃったから」
言いつけるなり、人の顔にめがけてひっぺがした布団を投げつけてくる。寝起きでぼんやりした頭で、俺は、どこか照れくさそうに絞り出された、その台詞を聞いた。
「昨日は、慰めてくれてありがとう」
それから聞こえてきたのは、さっとふすまを開ける音、さっそうと逃げていく足音と気配、それから先刻より僅かばかり大きく聞こえる小鳥の鳴き声だ。
「………」
まだ頭は働かない。息苦しさにとりあえず目の前の布団を押しのけたところで、言い逃げていった男の後ろ姿が見えるかと体を起こした。影も形もない。ボロを出す前に逃げ出したのだろう。すばしっこい奴だ、と思ったところで、
「………」
眠気に負けて、俺は再び布団に沈んだ。
Fin